少し前にツイッターで話題になっていた「推し、燃ゆ」
三島由紀夫賞最年少受賞の21歳、第二作にして芥川賞受賞作という、どこかで聞いたような話だと思った。まるで「響 〜小説家になる方法〜」を地で行くような話じゃないか。そんな事でとても気になっていたのだ。
「推し、燃ゆ」推しとは自分の大好きな、応援しているアイドルだったり野球選手を指す。僕自身、ツイッターをやっていなければおそらくこの単語の意味を知らなかっただろう。
推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。まだ詳細は何ひとつわかっていない。何ひとつわかっていないにもかかわらず、それは一晩で急速に炎上した。
この一文から物語が始まる。「推し」「炎上」まさに現在の日本社会の物語である。推しはアイドル。主人公は女子高生でバイトしながら推しを推す。
これはしかし経験した事の無い人には全くわからん世界である。もちろん僕も無い。その世界観がとても分かりやすく描かれていた。なるほど、そんな気持ちなのかと。
僕にも無いと書いたが、自分に置き換えると、例えばカープだったり、誰か特定の選手だったりするのだろう。だがやはり世界観が違う。ジャンルの違いなのか、世代の違いなのか。
この本の帯には各紙誌激賞!と書かれて色々コメントがよせられている。
「うわべでも理屈でもない命のようなものが、言葉として表現されている力量に圧倒された」島本理生
「未来の考古学者に見つけてほしい時代を見事に活写した傑作」朝井リョウ
「すごかった。ほんとに」高橋源一郎
「一番新しくて古典的な、青春の物語」尾崎真理子
「ドフトエフスキーが20代半ばで書いた初期作品のハチャメチャさとも重なり合う」亀山郁夫
「今を生きるすべての人たちにとっての歪(いびつ)で、でも切実な自尊心の保ち方、を描いた物語」町田康
「すべての推す人たちにとっての救いの書であると同時に、絶望の書でもある本作を、わたしは強く強く推す」豊崎由美
どれもなるほどと思える感想である。だが、やはり尾崎真理子さんの「一番新しくて古典的な、青春の物語」という表現が一番当てはまるだろうと思う。表現力なのか文章なのか。とても古典的な感じがした。いわば、最新の古典だ。
装丁にも工夫がされている。
きれいなピンクの表紙を開くと中は鮮やかな青色で、これは読み終えた物にしか意味がわからないのだろう。
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